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Dr.Toeの日曜日

災害とアマチュア無線

阪神淡路大震災を患者と医師とアマチュア無線家の立場から検証する

        東條純一(JH3AEF) 故田路嘉秀(JA3XZW)

はじめに

1995年1月17日未明、兵庫県南部を襲った「阪神淡路大震災」は都市直下型大地震の恐ろしさを目のあたりに見せつけ、我々に多くの課題を投げかけた。今日、我が国では津々浦々まで開発の波が押し寄せ、各地の県庁の所在地はもとよりどの地方都市を見ても同じようなビル街が望まれる。 一方、我が国は有数の地震国であり、活断層や火山も多く、毎年台風にもみまわれている。災害に対する備えは、多くの犠牲を払いながら会得した貴重な資料を基に、常日頃綿密に検討し、常に即応可能な状態に維持されなければならない。

震災4年目を迎えるに際し、災害を想定したサテライト通信網が実用化された、拠点病院間、更には中小医療機関をも対象とした画像伝送システムの実用化も運用の段階に入った等、頼もしい報道が目についた。災害救援にエレクトロニクスを初めとした新しい技術を導入することは、我が国の最も得意とするところであり、今まで想像だにしなかった手法を組み込んだマニュアルの出現をおおいに期待するところである。

しかしながら、一方において、今回の震災の被災地の現状を見る限り、現実は更に更にミクロの単位で、即ち、一人一人の身の回りで危機が発生し、その事が人々の尊厳を痛烈に脅かして来た事を忘れてはならない。救急車を呼びたいが呼ぶすべがない。病院に急ぎたいが道路は通れない。給水車は来るが身重の体ではそれを家まで運べない等々。

そこで、今回私は地震発生時被災地域に居住していた100余名の医師、同じく100余名のアマチュア無線家のご協力により頂いた貴重なご意見と、兵庫県産婦人科医会、兵庫県医師会が実施した「阪神淡路大震災のストレスが妊産婦及び胎児に及ぼした影響に関する疫学的調査」(1996年3月、9月)を参考にさせていただき、震災当日及びその後、地域で生活した患者、医師、アマチュア無線家、それぞれの状況を検討した。

即ち、地域で生活していた妊産婦(患者の立場を如実に代表するもの)はどのように行動し、どのような困難を感じ、何を切望し、将来に向けて何を示唆したか。また、地域に同じように生活し、診療に従事していた医師達はどのように行動し、何に苦労し、どのように貢献出来たのか、或いは、出来なかったのか、何処をどのように改善すれば効果的な初動体制がとれるようになるのか。 更にまた、地域のアマチュア無線家達は、日頃慣れ親しんだ技術や機材を如何に役立てたのか、或いは全く役立てる余裕さえ無かったのか、多くの運用の中で何を痛切に感じ取り、どのような点を歯痒く思い、どのような手応えを感じ取ったのか。

今回は、立場の違った三様の方々から寄せられた貴重なご意見をお聞きいただき、さらに、アマチュア無線家であると共に、医師として日頃診療に携わる我々が如何に行動すべきかについて考えるための貴重な資料とさせていただきたい。
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