沢山の妊産婦さんに接していますと色んなものの考え方の女性がいるものだなとつくづく感じ させられます。
お産をひかえて発せられる言葉には、多くの場合、強いイキミに伴って自然に出てしまう声、呼吸と共にもれ出てしまう声など色々有ります。このような自然に出てしまって いる声に対しては、「あー頑張ってるんだな、もう少しの辛抱だ、間もなく可愛いベビーちゃんの お顔が見られますよ」と激励したくなることが多いのです。
しかし、時には「あーもういや」「先生、はよ切って出して」など一寸いただけない言葉も無いことはありません。いま、いただけないと申しました。産婦さんにとっては偽らざる心境には違いないのです。
でも、これからまさに貴女のご家族の一員になろうと、必死に出生を目指して頑張っている可愛い二世のことも考えてみてあげて欲しいのです。ベビーチャンは決して泣き言は言いません。 けなげにもこの世に姓を受けるべく懸命に頑張っているのです。このことを考えれば、いままさに お母さんになろうとしている貴女自信も,赤ちゃんに負けないように頑張らねばならないことが お解かりだと思います。
このような場面で私は何時も産婦さんにお話いたします。「この分娩台で今まで何千人もの人が お産をしてきたのだよ、みんな同じように、皆同じ位の時間をかけて、皆元気な赤ちゃんを産んできたのだよ。 決して貴女だけが苦しいのではないんだよ」「大変だけど、あと一息。私達のアドバイスをしっかり 実行していただいたら、一番楽に、安全にベビーちゃんに対面できるんだよ」と。
時には「貴女の お母さんが貴女を出産したときも、この同じ部屋で、全く同じように努力をして貴女を出産したの だよ」とお話する方々もあるのです。
先の項でもお話したとうり、大昔も現在も、人はその社会的地位、民族に関わらず、すべて平等に、 同じ位の時間をかけて、同じような過程を踏まえて出産を果たすのです。
残念ながら科学の進歩した現代においてもなお、真のお産の部分だけは今も昔も変わっていません。 進歩したと言えるのは、いかにお産を安全に進めるかのための技術であって、お産の実質的なところを 容易にとか、軽快にするためにの進歩ではないのです。
周りの雑音に惑わされることなく、我々お世話する当事者のお話しすることをしっかりご理解いただ いて、その言葉には厳しく耳を傾けていただきたいのです。その効果を実感できるのも貴女自信なのですから。 決して遠慮はいりません、解らないことを質問するのをためらわないように、我々は質問に対して懸命に お答えすることを一番の務めと考えているのですから。
心配はご無用に、貴女も立派にベビーちゃんをお迎えになることが出来ます。
参考までにある年一年間に当院でお産を迎えられた方々の状況をお示しいたします。
経膣分娩 92% うちわけ(自然77% 吸引6.5% 誘発5% 鉗子2% 促進1.5%)
帝王切開分娩 8% うちわけ(初回帝王切開 4% 反復帝王切開 4%)
以上のデータから、この年は92%のお母さんが自然の経路をへて出産されましたた。そして77%の お母さん達は何ら人工的な手を加えること無く、自然に備わったご自身の力だけで立派にベビー ちゃんを出産なさったということがお解かりいただけたと思います。
当院では常に自然なお産、安全なお産を大事にして、お産のお手伝いをしてまいりました。
しかし、貴女だけが特別に楽をして、あっという間に終えることのできるお産をしていただくことは、いかに医学の進歩した今日でもいまだに不可能なことなのです。