矢張り心配なのは副作用のことですね。全くありませんとお答えすれば嘘になるでしょう。しかし、先にも述べましたように私がこの薬とかかわりだして
以来、約40年にもなろうかという永いあいだ、一人として重篤な副作用を起こした人にお会いしたことがありませんでした。非常にラッキーであった
という以上に、この薬が 人の安全を脅かすものでないということを良く物語っていると実感いたします。
薬が危険だと判断するポイントはその危険が発生する頻度と重篤さにあります。以下の疾病は誰にでもおこりうる病気ではありますが、ピルによる副作用として発症することも
確認されているものです。それでは経口避妊薬をのんだ場合どの程度これらの病気の発症は増加するのでしょうか。この点に関して調査した報告があります。
人口10万人当たり1年間の 患者発生数で示します。病名の後に示された数字、→の左側がピルをのまないグループ、→の右の数字はピルをのんでいる人のグループでの患者発生数
を示しています。静脈血栓塞栓症 5→
15-25人、虚血性脳卒中 100→200人、子宮頸癌 11→ 10-22人となります。すなわち静脈血栓塞栓症では、ピルを服用しなくても1年に10万人中5人が発症するところ、
ピルを服用することにより発病者数が15人に増加することを示しています。
いずれも発症すれば重大な結果を招き かねない疾病ですが、10万人の中から1年間に発症する数ということを考えるといかがでしょうか。
また、違った面からそれぞれの病気をみた場合、静脈血栓塞栓症は 妊娠中にも発症し、その数は10万人当たり年間60人と報告されています。妊娠することそのものによる危険の
ほうが遥かに高いということがお解かりになると思います。驚くような数字ですね。
ピルの危険度を考えるとき、次のような死亡原因別データの比較もよく用いられます。10万人、1年間あたりの死亡者数は、 喫煙 が原因で死亡する人167
、 交通事故 8、 妊娠,出産 6であるのに対し、ピルの服用(健康な非喫煙者)では 1 であり、 あなたが妊娠,出産することの方がピルをのむことより6倍もリスクが高いと
いうことになるのです。