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エイズに対する正しい知識を持ちましょう

エイズという言葉

エイズ(AIDS)という語は病気の名前で、正確には後天性免疫不全症候群といいます。AIDSはその英語名の頭文字をつなぎ合わせて作られた略号にあたる言葉です。 後天性とは産まれたときから備わっていた体質ではなく、生後に体にもたらされた体質を意味します。免疫不全とは各種のばい菌に対する抵抗力が充分でなくなる体の変調を 意味します。エイチアイブイ(HIV)はAIDSを引き起こすウイルスの名前で、人免疫不全ウイルスの英語名を略したものです。このウイルスは非常に小さいもので、電子顕微鏡 でないと見ることは出来ません。

エイズという病気の起源

その起源はアフリカに住むチンパンジーや尾長ザルに寄生するウイルス病だったと考えられています。しかし、そのウイルスが非常に長い年月をかけて変化し、いつの間にか 人の体に住み着くようになったのであろうと考えられています。そして現代では、このウイルスの名前の前に「人」の文字が付けられているように、人から人に感染する 人固有の疾病の原因ウイルスに変遷してしまいました。現代ではこのウイルスが動物から人に感染したり、人から動物に感染したりすることはありません。すなわち、 エイズウイルスは人によって人から人へ感染が広がっていく病気であることを忘れてはなりません。

あなたは大丈夫ですか

AIDウイルスに感染したかどうかを調べるには、心配なSEXがあった後2週間以上経っていることが必要で、直後に調べても正確な結果は得られません。 検査はどこの医療機関でも受けられます。少し血液を取るだけの検査で、いたって簡単です。そして、そんなにお金のかかる検査でもありません。

AIDで死亡することはなくなりました

昔はHIV感染症、AIDSは、ひとたびウイルスに感染してしまったら、何の治療法も無く、感染から5〜10年のうちに必ず死に至る病気だと 考えられていました。しかし、研究は長足の進歩を遂げ、今日では感染したウイルスを完全に駆除することは出来ないまでも、その活性を極力おさえ、患者が免疫不全に陥る ことを阻止し、死亡することをも避けられるようになりました。さらに、危険な合併症を押さえ込む薬剤も多種開発され、合併症で命を落とすことを予防することもできる ようにもなりました。すなわち、早期に診断をうけ、直ちに治療を開始し継続することにより、エイズで死亡することはほぼ無くなったと言えるでしょう。 米国の原因別死亡者数の推移を見ますと、1994〜1995年にはEIDSの死亡者数が癌、心疾患、事故などを抜き一位になっていました。しかし、HIVが人の体内で増殖する のを抑える薬が開発された1995年以降は急激に減少をしています。 エイズウイルスを退治することはできません いま重要なことは開発されている薬剤はHIVを取り除くまでの効力はまだ持っていないということです。 すなわち、ひとたびHIVが体に感染してしまった場合は、その発病を食い止めるため、一生薬をのみ続けなければならないということです。薬剤は小型に改良され、服用 しなければならない薬の種類も少なくなりました。最近では薬の服用について患者側の苦痛は大きく改善されました。しかし、その服用についてはなお非常に厳しい決まりが あり、週に一度以上ののみ忘れも許されないほどです。

治療には莫大なお金がかかります

それにもまして薬剤に対する出費は非常に高額で、年間約250万円ものお金がかかります。仮に一生服用を続けた場合の治療費は1億円と 試算されています。それでも間違った対応さえなければEIDSで死亡することはなくったのですから、科学の進歩には感謝しなければなりません。

わが国のAIDS患者数は増え続けています

残念ながらわが国ではEIDS患者数は増加の傾向をたどっています。 平成20年度全国のAIDS患者数は 432名、HIV感染者数は1113名で平成元年から減ることなく増加し続けています。(2008年エイズ厚生労働省動向委員会報告) 近畿地方のHIV感染者数をみますと大阪府を除く他府県が約30名以下にとどまるのに反し、大阪府では2007年度140名強、2008年度180名と極端に多く、また、増加の傾向を示して います。(同委員会報告)また献血に際しては必ずHIVに関する検査が行われますが、10万人あたり1.74名の抗体陽性率であると報告されています。

大阪府だけが特に患者数が激増しています

2008年の新たな感染者の報告数では大阪府が180名でした。兵庫県や京都府の30名以下に比べると大阪府の 患者数がいかに多いかがお解かりいただけると思います。

感染はどのようにしておこるのですか

感染は精液、膣分泌物、血液によっておこります。勿論、性行為が主体です。その他に、輸血など血液を 媒介して感染することがあります。また、AIDSの母親から退治や新生児、乳児に感染する母子感染(経胎盤、産道、授乳)なども重要な感染経路のひとつです。

こんなことでは感染いたしません

話をする、手をつなぐ、風呂に入ったり一緒に泳ぐ、電車のつり革、一緒に食事をする、咳やくしゃみ、蚊に 刺される、ペット、キス等、唾液、涙、汗を介しての感染などもありえません。

妊婦さんは

妊婦にとってHIVの母子感染ほど恐ろしいものはありません。しかし、HIVの母子感染の予防が検討され始めた1992年、1993年をピークに 母子感染の発生頻度は著しく低下してきました。無治療、無対応の出産で20~28%の母子感染が発生するのにたいし、薬による多剤併用療法と、帝王切開分娩の採用により、 現在では母子感染の発生率は1%以下におさえられるようになっています。

HIVの感染を予防するには

1.禁欲 2.決まった相手と 3.SEXのときには必ずコンドームの使用を 以上が三つの大きなかぎと言えましょう。 またコンドームの使用により、その他の性感染症の感染頻度は確実に下げることができます。このことはHIVの感染を予防する上から非常に大切なことです。なぜなら、 性感染症の患者さんはAIDの感染を受けやすいことが明らかになっているからです。

最後に

いまやHIV感染症は治療の可能な慢性感染症になりました。しかし、まだ完治することは不可能な疾病です。感染しないことが何よりも 大切なことなのです。

2009/03/18 大阪府医師会 学校保健研修会要旨 

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