先ず子宮癌検診、特に子宮頸癌検診についてお話します。
もうかなりの方がご存知のように、子宮頸癌はウイルスというばい菌の感染により引き起こされることが明らかにされました。そして、そのウイルスはSEXによって体に入ってきます。この関係につきましてはこのHPの「子宮頸癌は予防できます」「子宮頸癌の公的予防接種」「頸癌ワクチンは安全です」の各項も参考にお読みいただければ理解が深まると思います。
ですから子宮頸癌に対する検診はSEXに目覚める年代、あるいはその少し後くらいの年代から始めるべきものなのです。子宮頸癌のための検診は若い世代にこそ
特に必要とされる検診であることを忘れないで下さい。
子宮頸癌の罹患率は20〜35才で急上昇いたします。
検診といいますと何か非常に苦しいとか、痛みを伴うとか、時間がかかるといったイメージをお受けになる方が多いのですが、決してそのようなものではなく、いたって簡単です。
何よりも子宮頸癌の発生する場所、すなわち子宮頸部は、鼻や喉のように体の外から直接目で確かめることのできる場所なのです。ですから検査はいたって簡単です。必要以上に神経質にならずに積極的に検査を受けることをお奨めします。
自己検査法とかいう簡便な方法でなく、産婦人科で正確に子宮頸癌の発生する場所から検査材料を採取する方法で検査をお受けになることをお奨めいたします。
参考までに世界の国々の子宮癌検診の受診率を見てみましょう。
受診率の高い順に アメリカ合衆国、フランス、カナダ、ノールウエー、アイスランド、ニュージーランド、スエーデン、フィンランド、イギリス、オランダ、
ベルギーの順になり、いずれも80〜70%の高い受診率を示しています。
これに対して日本ではようやく20%に達したところです。平成16年より行政は公費検診対象年齢を20才に引き下げましたが、まだまだ諸外国の受診率にはほど
遠い状態です。最近の金沢市での受診状況は18〜19才=0%、20〜24才=11%
25〜29才=23%と言った状態です。
行政が主導する公費検診制度は経済的問題もあり、隔年とか、5年毎の節目の年とかの受診を奨励していますが、医学的には、20才代でSEXのある女性の検診は毎年受診が必要というのが当然と考えられています。
また、細胞診の結果が正常であった場合でも、内診所見で子宮頚部が異常に硬いあるいは大きい人、頻繁に出血を起こす人は再検診を受けることが奨励されています。
ここで私の持論を少々
公費検診の受診率の上がらない理由の一つ、それも大きな理由は受診者を行政の区画で差別するからです。すなわち、他の町に住む人はこちらの町では検診が受けられないのです。私の医院は隣町の病院に接しています。間に大きな川が有るわけでもありません、鉄道でさえぎられているわけでもありません、要請があればお隣の病院につっかけででも駆けつけます。そんな条件でも公費検診となると「NO」なのです。患者さんに右へ左へされると事務手続きが煩雑になる、会計面で一律にいかない等、複雑なことがあるのでしょうね。けれども、市民のため、国民のためにその苦労をあえて享受する、あるいは自らも簡素化に努めて解決していくのが公僕といわれる行政や国のあるべき姿ではないでしょうか。受診率が上がらないのを受診者の意識の低さに押し付けている限りは、先進諸国との格差は益々広がっていくでしょう。
先に述べましたウイルス(正確にはヒトパピロマウイルス)には100種以上の種類がありますが、その中で子宮頸癌を引き起こす原因になるのは発生頻度の高い順から16、18、45、31、33、52、58、35、59・・・の番号がついたウイルスとされています。
これ等のウイルスの感染を阻止する予防注射も開発され、日本でも公費接種(多くの市町村では中学、高1女子が対象)が平成23年春から開始されています。
この予防接種による感染阻止率はヒトパピローマウイルス16,18番に対しては93%、その他のものに対する関連阻止率は53%とされ、70%の子宮頸癌は予防接種で阻止できるようになってきてはいますが、残りの30%の部分を阻止する為に子宮頸癌検診が必要となるのです。
公費接種の対象年齢でない人も予防接種をうけたうえで、全ての年齢層の人が毎年検診を受けることにより、子宮頸癌を100%封じ込めることができるのです。
子宮体癌は更年期が近づく45才ころから増加する子宮の奥(体部)に発生する癌ですがウイルスの感染とは関係ありません。不正性器出血が主要な症状ですので、生理の有る無し(閉経)にかかわらず、異常出血に気付いた時には直ちに検査を受けることが大切です。
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