妊婦さん 授乳婦さん 受けるべきか のむべきか
インフルエンザの予防接種
および
抗インフルエンザ薬
結論から申します。
予防接種は積極的に受けるべきです。
罹患してしまったら直ちに抗インフルエンザ薬の服用を始めるべきです。
インフルエンザ罹患者に接してしまった場合にも速やかに予防投薬を始めるべきです。
妊娠の時期にかかわらず予防接種による有意な母体副反応、流早産、児の奇形の増加は認められていません。不活化(ウイルスを分解抽出して作られた)ワクチンであるため皮下へ接種したものが母乳を介して児へ経口で移行する可能性もありません。
予防接種により妊婦も非妊婦と同様に免疫を獲得し、作られた抗体は胎盤をとうして胎児にも移行し90%が母児共に免疫を獲得することが確認されています。このことにより完全な感染阻止は出来ないとしても、感染による重症化を防ぐことができます。
妊婦がインフルエンザに罹患し重症化した場合には、容易に肺炎や呼吸器不全等に陥り
望みもしない治療を受けざるを得なくなります。特に2009年より流行し始めた新型インフルエンザ(A/H1N1pdm感染症)は妊娠後期に感染すると重症化しやすく早産を誘発したり、呼吸器不全、さらには脳炎、心筋炎など全身性に悪化し死亡に至る症例まで報告されています。
特に妊娠後期から産後四週までの危険度が高いと指摘されています。
その理由は妊婦の細胞性免疫力、液性免疫力の低下や妊娠による横隔膜挙上が原因であることが明らかになっています。
いずれにいたしましても、このように危険なインフルエンザには罹患しない事が一番です。予防接種を受け感染を予防することが一番ですが、たとえ感染しても抗ウイルス薬を
速やかに服用し重症化を防ぐことが大切です。
ワクチンの使用、抗インフルエンザ薬の積極的使用が行われている日本では、そうでないアメリカ合衆国、オーストラリア、ニュージーランドに比べ罹患者、死亡妊婦の数が非常に少ないことが明らかになっています。
予防接種を受けていない妊婦がインフルエンザ罹患者と接触した場合には出来るだけ速やかに抗インフルエンザ薬の予防投薬が勧められています。この薬による催奇形性はほぼ否定されており妊娠中、授乳中全ての期間で服用が可能です。
不幸にしてインフルエンザの症状を発症してしまった場合には出来るだけ速やかに(発症後48時間以内に)抗インフルエンザ薬の服用を開始し重症化を防ぐことが大切です。
発症後7日以上を経過し体温その他の症状が消失した場合には母児の接触が可能になり母乳を与えることも出来るようになります。
以上のことを総合的に考えた場合、妊婦さんは妊娠の初期、中期の間に予防接種を済ませインフルエンザ対策をしておくことが最も賢明な対策です。
少し難しい話しになりますがH5N1と呼ばれているのが鳥インフルエンザの原因になるウイルスで非常に強毒、死亡率60%とされています。しかし、H7N9と呼ばれる更に強毒の
インフルエンザウイルスの出現も確認され、人から人への感染は確認されていないながら、現存の検査薬が無効の状態で通常の方法では診断すら不可能な状態です。しかし、有難いことに現存の抗ウイルス薬が有効とされている点だけはやや救われた感じがしないでもありません。
日本産婦人科医会研修ノートNo87「ワクチンのすべて」10/2011
大阪府医ニュース「インフルエンザによる妊産婦への影響」田村明敏17/10/2012
大阪府産婦人科医会平成25年度第一回研修会 07/08/2013
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