先生、今回はどうしても産めないのですが! それぞれの人にそれぞれの事情があり、立場があり、意見があるでしょう。 世の中には常識もありましょうし、一方では偏った考え方をする人や、 自己中心的な考え方の人もいるでしょう。さらには宗教にもとづく考え方 や風俗習慣もあるでしょう。 私は決して命を粗末にあつかうことを推奨するものではありませんし、 中絶を推奨するなど考えたこともありません。
しかし「どうしても産めないのです、あるいは産みたくないのです」と 苦悩する女性に対面した時にはいつもお話します。「今回はどうしても お産みになることが出来ないのですか? 相手の方とも十二分に相談した のですか。少々苦労しても頑張って出産することを考えてみたらどうで しょうか」と。 それでもどうしても、とおっしゃる方にはご本人の考えどうり中絶をする ための手続きをとることにしています。 とにかく十二分に考えたうえでの結論です。いま出産することにより 貴女方の生活が、将来の貴女方の生活が大きく損なわれるようなことはあってはなりません。そのような不幸を回避するために、わが国では母体保護法という法律をつくり、人工妊娠中絶術も 一つの合法的な選択肢とすることを認め、母親の健康、そして幸せな家庭を守っているのです。 まわりには色々な意見が氾濫しています。それに惑わされることなく しっかりと自分の意見を 持ってください。法で定められた範囲内であなたが選択する行動は、誰に非難されるべきものでもなく、当事者以外のどなたにも非難したり阻止したりする権限はないのですから。( )